今後の変動金利の行方を予想するためには、引き下げ幅と日銀の政策金利に注目する必要があります。
まず、引き下げ幅については銀行同士の競争が続く限り高止まりが期待できます。住宅ローンは、銀行にとって、個人のお客さまに提供している重要な金融商品の1つです。
都市銀行や地方銀行だけでなく、ネット銀行も含めて顧客の争奪戦が続いており、一定の引き下げ幅は維持されるでしょう。仮に引き下げ幅が縮小された場合でも、既に住宅ローンを借りている方の引き下げ幅は変更にならないのが一般的です。
次に物価の情報を確認しておきましょう。総務省統計局が発表した2023年9月分の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)は、前年同月比プラス2.8%となっており、実は、日銀の目標であるプラス2%を超えています。
しかも、年2%以上の物価上昇は一時的なものではなく、2022年中から継続的に起きている現象です。下記グラフからわかるとおり、総合指数、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数でも同様の傾向が見られており、データを額面通りに受け取るなら、「日本の物価上昇率は年2%に到達している」と解釈するのが自然だといえます。
この事実を見ると、「既に消費者物価指数は年2%上昇の目標を達成しているのに、なぜ2023年10月の金融政策決定会合で低金利の政策を変更していないの?」と疑問に思う人は多いと思います。
この理由は、まだ日銀は「物価安定の目標」が達成できたとは判断していないからだと考えられます。日銀が求めているのは、消費者物価指数が安定的に前年比2%程度上昇している経済です。
しかし、日銀の2023年10月31日版の経済・物価醸成の展望に書かれている政策委員の物価見通しは、下記の表のとおりになっており、2025年度の消費者物価指数は前年比2%を割り込む可能性があるものとされています。このことが、政策金利が据え置かれている理由だと考えられます。